最近よく見る、折りたたみスマホ。あの画面、どうなってるんだろう、って。ちょっと気になって調べてみたメモ。
そもそも、なんで曲がるの?
一番簡単な答えは、「基板がガラスからプラスチックに変わったから」。 でも、それだけじゃないみたいだ。ちょっと考えればわかるけど、ディスプレイの製造って高温プロセスが多い。普通のプラスチックじゃ、その熱に耐えられない。だから今までは硬いガラスが必須だった。
じゃあどうするのか。そこで出てくるのが「剥離転置(はくりてんち)」っていう技術。シャープなんかの技術資料で見た言葉だ。 要するに、いったん頑丈な「キャリアガラス」の上でディスプレイの主要部分を作っておいて、完成したら、その上に貼り付けたフレキシブルな基板だけをペリッと剥がす、みたいな感じ。すごく賢いやり方だと思う。
一枚のシートじゃない、複雑な構造
曲がるディスプレイって、ただの柔らかいフィルム一枚じゃない。実は、何層も重なったミルフィーユみたいな構造になってる。
- 基板:土台になる部分。ポリイミドっていう、熱に強くてしなやかなフィルムが使われることが多い。
- TFT層:画素一つひとつを光らせたり消したりする、超小型スイッチの集まり。これを均一にフィルム上に作るのは、すごく難しい技術。
- 有機EL (OLED) 層:これが実際に光る心臓部。自ら光るから、液晶みたいにバックライトが要らない。だから薄くできる。
- 封止層 (TFE):有機ELは水分や酸素にすごく弱い。だから、薄い膜で何層もバリアを作って守ってあげる必要がある。これを薄膜封止(Thin Film Encapsulation)って言うらしい。
- 表面保護:そして一番上には、ユーザーが直接触れる部分。折りたたみスマホだと、髪の毛よりも薄い「超薄型ガラス(UTG)」が使われたりする。 プラスチックだけだと、やっぱり傷がつきやすいから。
日本の技術と世界のトレンド
調べてみると、日本のメーカーもすごい技術を持ってる。例えばシャープはNHKと共同で、ローラブル(巻取り型)の30インチ4Kディスプレイを開発してる。 こういう精密な製造プロセスとか、材料技術は日本の得意分野って感じがする。 IGZO技術の応用も強みみたいだ。
一方で、世界を見ると、特にSamsung Displayの動きが面白い。 彼らは「Flex In & Out」っていう、内側にも外側にも360度折り曲げられるディスプレイをCESみたいな展示会で発表してる。 これが実用化されれば、今の折りたたみスマホみたいに外側にもう一枚ディスプレイを付ける必要がなくなるかもしれない。 より薄くて軽いデバイスが作れるようになる、っていう発想。こういう「使い方から変える」アプローチは、市場をリードしてる企業の強さかな、と思う。
次の主役は?マイクロLEDとの比較
フレキシブルOLEDが今の主流だけど、次世代技術として「マイクロLED」の名前もよく聞く。どう違うのか、ちょっと整理してみた。
| 比較ポイント | フレキシブルOLED | マイクロLED |
|---|---|---|
| 基本原理 | 有機物を使う。自発光。 | 無機物の超小型LED。これも自発光。 |
| 寿命・明るさ | 「焼き付き」が弱点。特に青色ピクセルの寿命が短いと言われる。 | 無機物だから原理的に長寿命で、高輝度化しやすい。 |
| 柔軟性 | すでに実用化済み。折り曲げたり、巻いたりできる。 | チップを曲がる基板に並べるのが難しい。まだ開発途上のイメージ。 |
| コスト | まだ高価だけど、だいぶ普及してきた。 | 現時点では非常に高価。量産技術が最大の課題。 |
こう見ると、性能面ではマイクロLEDに分がありそうだけど、まだコストと製造の壁が高い。当面は、フレキシブルOLEDの進化が続きそうな感じがする。
結局、これからどうなる?
折りたたみスマホが当たり前になって、次は巻物みたいなデバイスや、LGが開発しているような「伸びる」ディスプレイも出てくるかもしれない。 個人的には、クルマのダッシュボードが全部曲面ディスプレイになったり、服にディスプレイが埋め込まれたり、そういうのが面白いと思う。
技術の進化は、ただモノを便利にするだけじゃなくて、生活の形そのものを変える可能性がある。フレキシブルディスプレイは、その入り口なのかもしれない。
折りたたみ、巻き取り、伸縮... あなたなら、どんな「曲がる画面」があったら欲しいですか?
