企画広報の仕事、一言でいうと?
「企画広報の仕事って何?」って聞かれたら、うーん…そうだな。「会社の『伝えたいこと』と、世の中が『知りたいこと』の接点を見つけて、そこに橋を架ける仕事」…かな。ちょっと格好つけすぎか。要するに、会社の良いところを見つけて、それを色々な方法で、色々な人に知ってもらうための仕掛けを考える仕事、という感じですね。
マーケティングとよく混同されるけど、ちょっと違う。マーケティングのゴールが売上や利益を増やすことなら、広報はもっと広い。 会社そのものの信頼とか、良いイメージを作っていくのが目的。 もちろん、それが結果的に売上につながることもあるけど、直接的じゃない。もっと長期的な関係づくり、みたいな感じです。
実際の仕事ってどんな感じ?
じゃあ具体的に何をしているのか。日々の業務は、正直言って地味なことの積み重ねです。派手なイメージがあるかもしれないけど、現実はデスクワークがほとんど。 例えば、ある新商品を発売するときの流れを想像してみると、わかりやすいかもしれません。
朝、出社したらまずニュースチェックから始まります。 業界の動向、競合の動き、世の中のトレンド…自社の商品がどういう文脈で語られる可能性があるか、常にアンテナを張っておく必要があるんです。 これを怠ると、的外れなアピールになってしまう。
午前中は、関係部署との打ち合わせ。開発チームから商品の特徴をヒアリングしたり、営業チームから顧客の反応を聞いたり。社内の情報を集めるのも大事な仕事。 そして、集めた情報をもとに、午後はひたすらプレスリリース作成。 どの情報を、どの言葉で、どのメディアに届けたいか…。一文一文、すごく悩みます。これが一番のメイン業務と言ってもいいかもしれない。
夕方、書き上げたリリースを上司に確認してもらって、修正して、配信準備。配信サービスを使って、リストアップしたメディアに一斉に送る。送ったら終わり、じゃない。そこからがメディアリレーションズの始まり。 個別に記者さんに電話したり、メールしたり。「この記事、面白くないですか?」って、企画を売り込みに行くこともあります。
…と、まあこんな感じ。イベントでもない限り、だいたいこんな一日を繰り返しています。
じゃあ、どうやって進めるの?
仕事の進め方は、大きく4つのステップに分けられるかな、と思います。
- 情報収集と分析:さっきの「一日」でも話したけど、これが全ての土台。自社のこと、社会のこと、競合のこと。とにかく情報を集めて、今何を伝えるべきか、誰に伝えるべきかを分析します。
- 企画立案:集めた情報をもとに、具体的な広報戦略を立てます。「この新機能は、技術系メディアのAさんに響きそうだな」とか、「この社会貢献活動は、もっと一般の人に知ってもらうべきだから、SNSでキャンペーンをしよう」とか。
- 実行:企画が決まったら、あとは手を動かす。プレスリリースを書いたり、SNSに投稿したり、イベントを運営したり。 ここが一番目に見える部分ですね。
- 効果測定と分析:そして、やりっぱなしにしないのが大事。配信したリリースがどれくらい記事になったか、SNSの反響はどうだったか、ウェブサイトへのアクセスは増えたか…。数字を見て、次の企画に活かします。でも正直、広報の効果って数字にしにくい部分も多くて、そこが難しいところでもある。
会社によって結構違うよね
ただ、ここまで話してきた「企画広報」の仕事も、会社の規模や文化によって全然違います。特に、日本の大企業とスタートアップ、それから海外の企業では、役割がかなり異なりますね。
例えば、アメリカだとPRの専門性がもっと細分化されている印象があります。PRSA(アメリカ広報協会)の求人情報とか見ると、メディアリレーションズ担当、ソーシャルメディア担当、インターナルコミュニケーションズ担当みたいに、専門職として分かれていることが多い。 一方、日本の場合は「広報部」として、割と何でもやる傾向がある気がします。 日本パブリックリレーションズ協会のガイドラインを見ても、倫理規定とか行動基準が中心で、職務の分担までは細かく規定されてないですしね。
| 日本の大企業 | 日本のスタートアップ | 外資系・海外企業 | |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | 株主やメディアとの関係維持(IR含む)。伝統的なメディアリレーションが中心。あとは社内報とか。 | まず会社とサービスの認知度を上げること。SNSやWebメディア活用が中心。一人で何でもやる。 | 専門分野に特化。メディア担当、危機管理担当など役割分担が明確なことが多い。 |
| 意思決定 | 複数の部署との調整が必要で、時間がかかることも。トップダウンが多いかな。 | スピード重視。経営陣と直接話してすぐ決まることが多い。 | データやROI(投資対効果)を重視する傾向。ロジカルな説明が求められる。 |
| 使うツール | プレスリリース配信サービス、新聞クリッピングサービス。割と昔ながらのツールも現役。 | SNSの管理ツール、Google Analytics、noteとか。とにかく手軽で早く始められるもの。 | PR効果測定ツール、グローバルで統一された分析基盤など。結構高度なものも。 |
この仕事の「じゃない方」
広報って、キラキラしたイメージを持たれがちだけど、実際はそうじゃない部分も多いです。よくある誤解をいくつか。
まず、「華やかで楽しそう」というイメージ。確かに発表会とかイベントは華やかに見えるけど、それは仕事の一部でしかありません。 その裏では、地味な準備や調整、後片付けがたくさんあります。当日は裏方で走り回って、自分が楽しむ余裕なんてないことの方が多いです。
次に、「人と話すのが得意ならできる」という誤解。コミュニケーション能力は必要だけど、ただのおしゃべり好きでは務まりません。 むしろ、相手が何を知りたいのかを聞き出す力、そして自社の情報を正確に、分かりやすく伝える論理的な説明能力の方がずっと重要。
そして一番つらいのは、失敗が許されない場面があること。特に危機管理広報。 不祥事とか、ネガティブな情報が出た時の対応は、本当に胃が痛くなります。会社の評判を左右するプレッシャーは、かなり大きいです。
よくある誤解とか
最後に、未経験からこの仕事を目指す人からよく聞かれることについて、少しだけ。
「未経験でもなれますか?」という質問。なれます。でも、簡単ではありません。文章を書くのが好きとか、情報収集が得意とか、何か武器は必要です。 全くの未経験なら、PR会社に入って経験を積むのが一つの手かもしれませんね。
「広報に向いている人って?」と聞かれることも多いですが…うーん、難しいな。好奇心が旺盛で、会社のことを本気で好きになれる人、かな。あとは、地味な作業をコツコツ続けられる人。 派手さよりも、誠実さとか、粘り強さが大事な仕事なんだと思います。
結局のところ、広報は会社の代弁者であり、最初のファンであるべきなのかもしれませんね。その熱量が、言葉になって、社会に伝わっていく。…なんて、ちょっと綺麗にまとめすぎたかな。
もしあなたが企画広報の仕事に興味があるなら、まずは自分の好きな会社がどんな情報発信をしているか、プレスリリースや公式SNSをじっくり見てみるのがおすすめです。その「伝え方」に共感できるなら、きっと向いていると思いますよ。
