最近、巨大な製造業ってどうやって変わっていくんだろうって、ふと考えてたんだ。何十年も同じやり方で成功してきた会社が、今さら全部変えるなんて、正直、想像つかないよね。でも、そういうのを本当にやっちゃった会社がある。
中国の家電メーカー、美的集団(Midea Group)の話。正直、名前を聞いてもピンとこない人もいるかもしれないけど、世界的に見たらとんでもない巨人。その彼らが、ここ10年くらいでやったことが、なかなか…いや、めちゃくちゃ面白い。
TL;DR
要するに、彼らは「安くて良いものを作る工場」でいることをやめて、「テクノロジーで未来を作る会社」になるって決めたんだ。しかも、口だけじゃなくて、本気で。その結果、ただの製造業から、今や世界が注目するテクノロジーグループに変わりつつある。
すべては「このままじゃヤバい」から始まった
なんでそんな大変なことを始めたのか。きっかけは、2008年の世界金融危機、リーマンショックだったらしい。あれで、世界中の経済がめちゃくちゃになったよね。
その時、中国の製造業が抱えてた弱点が、はっきり見えちゃったんだ。つまり、「安さ」と「規模」だけで勝負してきたモデルの限界。コストの安い労働力に頼って、大量に作って輸出する。でも、世界が不景気になったら、そのモデルは一気に崩れる。美的集団も、このままじゃ未来はないって本気で考え始めたみたい。
ここがポイントで、多くの会社がコストカットとか、目先の対策に走る中で、彼らはもっと根本的な、ビジネスモデルそのものを変える道を選んだ。2011年頃から、本格的に「デジタル変革(DX)」っていう旅を始めたんだ。
具体的に何をやったの? 大きなステップは3つ
口で「変わります」って言うのは簡単だけど、彼らのやったことは規模が違う。特に大きな動きがいくつかある。
1. とにかく自動化・知能化を進める(KUKAの買収)
まず、2016年にやったことがすごい。ドイツの産業用ロボットメーカー、KUKA(クーカ)を買収したんだ。これ、ニュースで見た時、正直「マジか」って声出た。家電メーカーが、世界トップクラスのロボット企業を買うって、普通は考えない。でも、彼らは本気だった。自分たちの工場を、ただの機械じゃなくて「考える工場」にしたかったんだね。
もちろん、ドイツの先進企業を中国の会社が買収するって、文化の違いとか、技術の統合とか、めちゃくちゃ大変だったはず。でも、これをやったことで、美的はただのロボットの「ユーザー」から、ロボット技術を開発する側のプレイヤーに一気に変わった。
2. 自前の頭脳「M.IoT」を作る
次にやったのが、自前のクラウド基盤「M.IoT(Midea Industrial Internet of Things)」を作ったこと。これが、美的のDXの心臓部。簡単に言うと、工場の中のすべての機械、サプライヤー、在庫、販売データ…全部をインターネットで繋いで、一元管理するシステム。
これの何がすごいって、例えば「どの地域で、どのエアコンが売れてるか」っていうビッグデータを分析して、「じゃあ、A工場からB倉庫に、この部品を自動で送っておこう」みたいな判断をAIがやってくれるようになったこと。人の勘や経験だけじゃなくて、データが次の動きを決める。
このへん、世界経済フォーラム(WEF)が選ぶ「ライトハウス工場(Lighthouse Factory)」っていう、未来の工場の見本みたいなやつに、美的の工場がいくつも選ばれてるんだけど、その理由がよくわかる。WEFみたいな国際機関は、こういう先進的な技術を高く評価するよね。でも、その裏には、さっき話した2008年の危機みたいな、もっと泥臭い「生き残るため」の必死さがあったんだろうな、と思うと、見方がちょっと変わる。
3. 会社全体を「デジタル企業」に変える
そして最終的には、2025年までに「事業の100%をデジタル化する」っていう目標を掲げてる。もう、工場の一部がデジタル化されるとか、そういうレベルの話じゃない。会社全体、サプライチェーンのパートナーも含めて、全部デジタルで繋がる世界を目指してる。
これ、もう製造業っていうより、GoogleとかAmazonみたいなテックジャイアントの考え方に近いよね。
で、結果どうなったの?
こういう変革って、お金も時間もかかるし、失敗も多い。でも、美的が出してる数字を見ると、驚くしかない。
例えば、M.IoTを導入したことで…
- 製品の配送サイクルが、27日から12日に短縮(56%減!半分以下ってことだよね…)
- チャネル在庫が、前年比で40%減少
- 完成品の在庫回転率が、125%向上(つまり、作ってから売れるまでのスピードが倍以上になった)
数字だけ見ると「へー」って感じかもしれないけど、これ、ビジネスやってる人なら異常さがわかるはず。配送が半分になるってことは、お客さんを待たせないし、在庫が減るってことは、無駄なコストやリスクがめちゃくちゃ減るってことだから。
もっと現場レベルの変化もすごい。
美的集団のDX「前」と「後」
| 項目 | DX以前(たぶんこんな感じ) | DX以降(M.IoT導入後) |
|---|---|---|
| 原材料の在庫 | 倉庫に山積み。いつ使うかわからない部品もいっぱい。 | 80%も削減できたらしい。必要なものを必要な時に、って感じか。 |
| 製品の故障率 | まあ、一定数は不良品が出るのは仕方ない、みたいな。 | 36%も減ったって。生産ラインでAIがチェックしてるからかな。 |
| 生産効率 | 人が頑張る。とにかく頑張る。 | 17%アップ。これ、巨大工場での17%って相当なインパクトだと思う。 |
| 異常への対応 | 問題発生→誰かが気づく→電話で報告→担当者が現場へ…遅い。 | 75%も時間短縮。センサーが異常を検知して、即アラートが飛ぶんだろうね。 |
| 品質検査 | 人が目で見てチェック。疲れると見逃しもあるよね…。 | AIの画像認識で。検査コストは55%減って、精度は80%も上がったとか。もう人間に勝ち目ないじゃん…。 |
じゃあ、僕らは何を学べる?
正直、「美的集団だからできたんでしょ?」って思う部分もある。いきなりKUKAを買収とか、普通の会社には無理な話。
でも、大事なのはそこじゃない気がする。彼らのやり方から、規模に関係なく応用できそうなポイントがいくつかある。
- 「危機感」をエネルギーに変えること。彼らが変われた一番の理由は、「このままじゃダメだ」っていう強烈な危機感。逆に言えば、なんとなく上手くいってる時が一番危ないのかもしれない。
- データを見て、話すこと。M.IoTのすごいところは、勘や経験じゃなくて、データに基づいて判断するところ。まずは自分たちのビジネスのどこにデータが眠っているかを探すだけでも、第一歩になると思う。
- 自社だけでやろうとしないこと。美的も、IBMとかHuaweiとか、外部の技術を積極的に取り入れてる。餅は餅屋、ってことだね。全部自前でやる必要はない。
結局、デジタルトランスフォーメーションって、新しい機械を入れることじゃなくて、「会社の考え方」そのものを変えることなんだろうな、と。美的の例は、その一番わかりやすいケースかもしれない。
もし自分の会社で何か一つ、デジタル化で変えられるとしたら、どこから手をつけるだろう…。やっぱり、一番面倒で、一番時間がかかってるアナログな作業からかな。あなたの場合は、どう?
